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教授就任1年を迎えて

私が教室の責任者として着任し、ちょうど1年となりました。

月並みですが、あっという間の1年であった、というのが率直な感想です。沖縄で生活するのは初めてでしたが、皆様に支えられ公私にわたり充実した毎日を過ごしております。

さて、臨床・研究・教育の視点から振り返ると、着任当初から全てのことを2024年(令和6年度)に予定されている西普天間への移転の時期を意識して計画することにしました。それまでにいくつかのことをしっかりと軌道に乗せておき、移転後に大きく飛躍していくイメージです。

まず臨床において新たに着手することとして、肝移植医療とロボット手術の導入、の2点としました。肝移植については本年3月に無事に1例目の生体肝移植を成功させることができ、ロボット手術については、まずは直腸癌手術から始める計画で、金城達也講師が日本内視鏡外科学会技術認定医を取得し、導入のめどが立ったところです。消化器外科領域では上部消化管や肝胆膵手術へも適応が拡大されつつある現況ですが、あせらずに一歩ずつ進めていきたいと思っています。その他、従来からの胸腔鏡下食道切除術(VATS-E)、肝移植以外の肝胆膵高難度手術、乳腺外科や小児外科領域の先端医療など、特定機能病院としての役割をこなしつつ、移転を見据えて“患者第一”の診療を継続してまいります。

研究については、マンパワーの問題でしばらく機能していなかった教室の研究室を再起動するべく、本年度より採用の川俣太 助教を中心に、大学院生の上里安範君をベッドフリーとしてリサーチに集中してもらい、膵癌について臨床検体を用いた研究を始めています。消化器外科領域で現在最も苦戦している膵癌の予後を改善させるべく、新たな知見を求めて頑張ってくれています。研究費も少しずつ獲得できるようになりました。臨床研究についても、一般的なところではハイボリュームセンターに対抗できるわけはありませんので、我々特有の視点で本土、さらに世界にも貢献できるような情報発信ができればと思います。

教育については、あまり奇をてらわずに教室全体で学生や研修医と向き合ってface-to-faceで指導することを粛々と行っています。学生実習(ポリクリ・クリクラ)の総括は私自ら行っていますが、指導医たちのもとで担当患者についてレポートにまとめ的確にプレゼンしており、いつも感心しています。また、昨年度よりお願いしている豊見城中央病院外科の嵩下英次郎先生によるacute care surgeryについてのレクチャーは学生たちにも非常に好評で、我々がカバーできない領域を補っていただき、大変ありがたく思っています。当科を研修してくれた研修医からの指導医フィードバックでも高い評価をいただいており、忙しい中でも熱心に指導してくれている教室員を誇りに思います。

当初予定していなかった『高度肥満に対する減量手術』や『1型糖尿病に対する膵移植』などの新しいことも、いくつか着手しています。外科専攻医で入局を希望する者もちらほら出現し、大変嬉しく、心強く思っています。ぜひ教室員一丸となって、沖縄の外科医療をさらに発展させるべく精進してまいりますので、みなさまにも引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

令和2年6月30日

高槻光寿

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