新着情報

2023年10月25日 抄読会 発表者:研修医2年目 山口ほのか

論文名:Preoperative Treatment of Locally Advanced Rectal Cancerza

雑誌名:The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 2023; 389(4): 322-334

論文要旨:

 米国、カナダ、スイスで実施された国際共同非盲検無作為化第Ⅱ/Ⅲ相試験にて、cT2N1、cT3N0又はcT3N1の直腸癌で、括約筋温存手術が可能と判断された低リスクの症例を対象に、術前化学療法(mFOLFOX6療法×6サイクル。原発巣の縮小が20%未満の場合、又は副作用のためFOLFOX療法を中止した場合にのみ、化学放射線療法を行う。)と、欧米の標準治療である化学放射線療法(CRT 50.4Gy/28分割。フルオロウラシル 225 mg/m2/日又はカペシタビン 825 mg/m2×2回/日を5日間/週で放射線治療中に実施。)を比較した非劣性試験である。主要評価項目である無病生存期間は、FOLFOX群はCRT群に対して非劣性を示した。その他、副次評価項目である全生存期間や局所再発は両群で同様であった。R0切除率はFOLFOX群で90.4%、CRT群で91.2%、病理学的完全奏効率はFOLFOX群で21.9%、CRT群で24.3%であった。有害事象に関しては、術前治療ではFOLFOX群でCRT群よりgrade3以上の有害事象の発生率が高かった(41.8% vs. 22.8%)。術後補助療法ではFOLFOX群の方がCRT群よりも低かった(25.6% vs. 32.6%)。本邦の標準治療は、R0切除可能な直腸癌はリスクに関わらずupfrontの手術療法であり、局所再発リスクの高い場合にのみ術前CRTを行うことが弱く推奨されている。本試験は手術療法との比較試験ではなく、さらに局所再発リスクが高い症例に対しては、術前化学療法のみの有効性が明確でないため、今後更なる検討が必要と思われるが、新たな治療方針の選択肢の一つになり得ると思われる。

関連記事一覧