米国クリーブランドクリニックで肝移植の研究をしました:田畑聖仁(M3)
Cleveland Clinicでの3ヶ月間
琉球大学医学部医学科4年次 田畑 聖仁
この文章を書くにあたって、まずはこの度私にCleveland Clinicを紹介していただいた高槻先生、そして橋元先生をはじめとした、Cleveland Clinicにて様々なご指導をしてくださった先生方に心からお礼を申し上げます。
この度私は琉球大学の医学科3年次のカリキュラムのひとつである医科学研究の期間を使って、私はアメリカのオハイオ州クリーブランドに位置するCleveland Clinicで勉強させていただきました。私がCleveland Clinicで経験させていただいたことは主に①肝移植をはじめとした外科手術の見学、②移植外来の見学、③移植後の患者さんに対しての回診の見学という3点に大きく分けられます。特に①の移植手術の見学は日本とアメリカの移植事情の違いが顕著に出ており、非常に新鮮で良い勉強になりました。
過去に私は高槻先生に許可をいただき、琉大病院で行われた生体肝移植を見学させていただいたことがあるのですが、その際にドナーとなっていたのはレシピエントの親族の方でした。その一方でアメリカで見学させていただいた生体肝移植は、ドナーの方がレシピエントの方の親族ではないどころか、全く見ず知らずの人であるというケースがありました。この通り、アメリカでは生体ドナーになれる人に特に制限がないというのがまず日本との大きな違いでありました。また、生体肝移植の他に日本では脳死肝移植が行われておりますが、アメリカではそこに加えてさらに心停止ドナーも肝移植に使用可能ということで、私が滞在していた約3ヶ月の間にも実際に何例か心停止ドナーの肝移植が執り行われていました。もちろん脳死ドナーと比較して心停止ドナー肝だと阻血時間が長くなるため、虚血による合併症の頻度が高くなってしまうのですが、近年導入されたOrganOx metraという機械により、肝臓単体でヒトの体内とほぼ同じ条件で灌流が行えるようになり、その合併症の頻度も低下してきているという話を聞いた時は素直に医療技術の進歩にただただ驚かされました。日本ではまだ導入がされていないとのことだったので、もしこれが導入されたら今よりもグラフトロスの削減や、もしかすれば肝臓でも心停止ドナーの採用が期待でき、日本国内の移植事情も大きく変化するのではないかと思います。
最後におまけとして私が3ヶ月間どのような生活を送っていたかについて少し書こうと思います。1週間のうち月曜から金曜は基本的にじ病院の方を見学させていただき、土日は完全フリーといったようなスケジュールの中、私はよく土日にダウンタウンの方へ1人で赴き、博物館に足を運んだり、アパレル系のお店に入ってみたり、少し有名そうなスポットに訪れてみたり…などと1人の割に充実した日々を過ごしていました。ただひとつ難点があったとするならば、それは気温の低さでした。私が渡米した期間は12月頭から2月末にかけての冬真っ只中だったため、気温は氷点下の日が多く(日によっては-10℃を下回るほど)、時には私の膝下くらいまでの積雪が見られることもありました。私は育ちが大阪で、大学はご存知の通り沖縄にありますので、最初このレベルの積雪を見た際はかなりテンションが上がったのを覚えています。
この3ヶ月間の医科学研究が終わった現在でも、この時の体験が色濃く記憶に残っているほど貴重な経験を数多くすることができ、間違いなくこの経験は自分の将来に良い影響を与えてくれたと思います。繰り返しにはなりますが、この度私の医科学研究の期間に関わっていただいた方々に深くお礼を申し上げます。
Cleveland Clinicで使用していたID badge
昼のダウンタウンの風景
夜のダウンタウンの風景