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2024年9月4日 抄読会 発表者:嶋田圭太

論文名: First-in-class MKK4 inhibitors enhance liver regeneration and prevent liver failure

雑誌:Cell. 2024 March 3.
PMID:38490194

論文要旨
 健康な肝臓は無限に近い再生能力を秘めているが、急性/慢性肝障害により肝細胞の再生能力は低下する。この肝細胞の再生能低下は、例えば拡大肝切除や過小グラフトでの生体肝移植時に、十分な肝重量を維持または回復することができず、術後肝不全や移植肝不全を惹起する。
 この論文では、これまでなかった肝細胞の再生能を回復させる治療薬として、二重特異性キナーゼであるMKK4の小分子阻害剤の開発および特性評価について報告されている。この研究で開発されたMKK4阻害薬は、マウスおよびブタモデルでの肝切除後に肝再生を促進し、致死的とされるブタの85%肝切除モデルの生存を可能にし、またマウスの肝疾患モデルで抗脂肪変性および抗線維化効果を示している。さらに、MKK4阻害薬の臨床候補薬であるHRX215を用いた初のヒト第Ⅰ相試験が実施され、優れた安全性と薬物動態を明らかにしている。
 今後、拡大肝切除後肝不全や過小グラフトによる肝移植後の移植肝不全の予防薬/治療薬としてHRX215の効果を評価する臨床試験へと進んでいくと思われる。このMKK4阻害薬が臨床応用され、術後肝不全やsmall for size syndromeの予防が可能になることで、肝切除の適応拡大やドナープールの拡大、さらにはより小さなグラフトを選択できるという点でドナーの安全性向上にも寄与する可能性があり、画期的な研究結果と思われた。

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